アメリカでの社員採用プロセスを成功させるためのプロセスには、どのようなものがあるのでしょうか?

一般的には以下のようなステップで進みます。

1.履歴書審査
2.面接準備
3.面接実施
4.面接評価
5.テスト
6.照会
7.採用内定
8.オリエンテーション

以下に、それぞれのステップの詳細とチェックポイントを記載します。

1.履歴書審査

従業員を採用する際に、第一のスクリーニングとして履歴書が挙げられます。履歴書をいかに読むかによって面接に割く時間を節約できます。ただし履歴書の段階でスクリーニングし過ぎると、優秀な人材を見逃す可能性もあるので適度に行うように注意しなければなりません。 日本の履歴書の中には、アメリカでは法律によって聞くことが禁止されている条項が列挙されています。例えば性別、出生年月日、本籍、健康状態、家族氏名、写真の添付義務などです。一方、アメリカでの履歴書の特徴は、記述する事項が限られており、学歴、経験、能力、資格など、仕事に直接関係のある事柄に絞られます。

アメリカでの履歴書審査、チェックポイント
  • 履歴書の送付時に適切なカバーレターがついているか?
  • カバーレターには誰あてと、募集しているポジションが明記されているか?
  • スペルや文法が正確か、かつ文章力があるか?
  • 大学卒業事実の確認、大学卒業年度の確認(高校の卒業年度は聞いてはいけない)
  • 在学中の場合、卒業はいつか?
  • 勤務期間と転職回数をチェック。 1~2年ごとに転職を繰り返している場合は、今後も1~2年で転職するとされる。また勤務期間の年月日が記入されていなければ要注意
  • 一つの職種や一定した分野で仕事の経験を積んでいるか。一貫性がなく、様々に変更している場合、その求職者は飽きやすい傾向があると考えられ、要注意
  • たとえ転職しても、長期間同じタイトルの場合、能力や成長する意欲が欠けている可能性が高い
  • 履歴書で説明されていない期間が多い場合は要注意
  • 履歴書がオリジナルの場合、紙の質、色、しみなどに注意
  • コンピューター知識や他の技能がポジションの要求に合っているかを確認
  • 大学新卒の場合、大学で勉強していた内容とポジションの内容が近いかどうか
履歴書だけでは判断不可な事項については、応募者にジョブ・アプリケーション・フォームを記入していただきます。
このフォームの中にも、やはりアメリカでは日本の履歴書にあるような、仕事とは関係のない個人的な情報を聞いてはいけません。

2.面接準備

面接の際、同じ内容でも聞き方によっては雇用法違反となり、その応募者を採用しなかった場合に、差別的扱いを受けたと訴訟を起こされることもありえます。例えば、応募者に「アメリカ市民ですか」と聞いてはいけませんが、「採用後にアメリカで合法的に働ける証明を提出できますか?」と聞くことはできます。
日本での面接は、どちらかというと企業側が応募者を選ぶという関係にあります。応募者は企業についてのスタディをしていることが前提とされ、企業側は仕事内容その他について詳しく説明する必要はありません。一方、アメリカでの面接は企業側と応募者が同等であり、双方が説明し、売り込む必要があります。さらに、応募者が採用通知を受諾するまで、入社する意思があるかどうかは分かりません。企業側としても、応募者に対してプロフェッショナルな面接を行わなければ、欲しい人材を失うことになります。面接担当者としてトレーニングを受けたことのない人に応募者を面接させることは、重大なミスと言えるでしょう。

面接準備のポイント
  • プランニング
    面接担当者はそのポジションにどういう能力、技能が必要かを十分に理解し、仕事の内容をきちんと説明できるようにする。
  • 質問表を準備
    その仕事をこなすに当たり、絶対的に必要な知識を測ることが可能な質問を用意。更に応募者の判断力や考え方を聞き出すような質問を準備する。
  • 応募者の履歴書とアプリケーション・フォームをよく読む
    前もってその候補者の履歴書並びにアプリケーション・フォームをチェックし、ポジション及び職務の詳細など職歴に関する質問を準備しておく。
  • 電話でのスクリーニング
    面接の実施前に電話にて、例えば希望給与額を確認するなど、効率的に人材選びを行う。

3.面接の実施

応募者との面接の目的は、履歴書やアプリケーション・フォームを確認するためだけでなく、応募者の仕事をこなす能力の評価と順応性、協調性を見ることです。面接を進めるに当たり、応募者を面接の場でなるべく緊張させずリラックスさせるように心掛けることが面接担当者の第一の仕事と言えます。落ち着き次第、応募者の学歴、経験や仕事に関する話題を交えながら話を進め始めます。

 面接はポジションの種類や状況によって、1回で済むこともあれば2~3回行われることもあります。また職種によっては直接的な質問による20分ほどの面接で十分な場合もありますが、専門レベルの応募者に対する面接は1時間を超すことも一般的です。

 質問内容は間接的であり、ポジションの職務についてより深く掘り下げたものになります。効果的な面接を行うためには、応募者の本心を引きだすように、できるだけ応募者に話させる方向で進める方がよいとされています。(80%/20%ルール)ただし、常に面接のリードを取ることが肝心です。また担当者は1人だけではなく、必ず複数で面接を行い、判断を下すべきです。

面接の種類
・電話による選抜(Screening Interview)
・電話による資格審査。多数の候補者がいる場合に行うことがある。
グループ面接 (Group Interview)
・数名の面接担当官が、同時に1人の求職者に質問をする方法。
・連続面接(Serial Interview)
・応募者が、次々と順番に新しい担当官と面接を行う方法。
・食事を取りながらの面接(Meal Interview)
・社交の場での振る舞いを審査する。接待が多い業務に対する応募者を面接する場合に行われる。
面接の質問例
    • How do you spend a typical day at your current job?
    • Have you worked as a team member?
    • What skills from your last job can you use on this job?
    • Why are you leaving your current job?
    • What specific duties did you perform on your last job?
    • Tell me about a major project of accomplishment of which you are proud.
    • What are some of the things in a job that are most important to you?
    •  What skills do you think need to develop or want to develop?
面接時の注意点
    • 応募者に対する質問を経験、技能、学歴などに焦点を合わせ、ポジションや会社に結び付いた内容で進める。
    • 応募者に対して、そのポジションが過去から男性なり女性なりが遂行してきた、または伝統的にある特定の人種が行っていたなどといった供述を避ける。
    • 後光効果(Halo Effect)を避ける。面接担当者が応募者の一つの特徴にとらわれ、他の点の判断に影響を及ぼし、すべてが優れている、あるいは劣っているといった見方をしないように注意する。
    • ステレオタイプ(Stereotyping)を避ける。人種や民族グループによって判断することなく、応募者の能力や特徴を基に判断する。
    • 「自分のようだ」型(Just Like Me Syndrome)を避ける。応募者の態度や意見が面接担当者と似ていることから、好意的な過剰評価を与えないようにする。
    • 必ず複数の人間が面接を行う。

4.面接時の評価

面接が終わり次第、その応募者に関する面接ノート(Interview Report)をまとめることが肝心。多数の応募者を面接しているため、応募者一人ひとりについての特徴など忘れがちになる。他の面接担当者のコメントと比較する際に、面接ノートを活用すればより適時な評価を持てる。評価のポイントとして、ポジションにとって応募者の特定の能力、経験が「MUST」なのかそれとも面接担当者の「WANT」なのかを一つの判断基準とする。また各候補者を技能面、能力面、知識面別にランキングをし、並べて比較する方法を用いると、どの候補者がどの面において優れているかが把握しやすい。

5.テスト

ポジションによっては、面接の他に技能テストを行う必要がある。面接が先か、テストが先かは会社のポリシーによって異なるが、応募者を適切に、かつ公平に評価するためにテストが不可欠である。

実施するテストは、そのポジションで必要とするスキルによる。例えばその職務を遂行するためにタイピングを必要とするのか、あるいは計算する能力が必要であるかなどによって、行うテストを決める。ただし募集しているポジションに実際は必要のないスキルに対して、一定のグループの排除を目的としたテストを行うことは差別行為になるため、気を付ける必要がある。公民権法第VII章では、雇用者に対しプロフェッショナルに作られたテストであれば、その結果が差別的に利用されなければ応募者に与えてよいとしている。EEOCによると、マイノリティーに不利な影響(Adverse Impact)を及ぼすテストやビジネスへの必要性(Business Necessity)に欠けるテストは違法的差別であるとしている。

6.照会/レファレンス・チェック(Reference Checks)

採用をする前に多くの雇用者はレファレンス・チェックを行います。その方法としては、以下の2つです。

1. 応募者の過去の雇用者に電話をし、その応募者の就業期間、ポジションや退職した理由などを尋ねます。まず人事部に照会をとり、さらに応募者の現場のマネージャーに照会を依頼します。この際、現場の人が答えるのを断わり、人事部に戻すようであれば注意をした方がよいでしょう。

 

2. 応募者の過去の雇用者にレファレンス・チェック表を郵送して照会をとります。これは応募者のサインによって、応募者は過去の雇用者が情報を提供することを認めているため、返答を得やすい方法です。また逆に、照会を依頼された際には以下の点に注意します。

レファレンス・チェックの注意点
      • 主観的な返答を避ける。
      • 自ら進んで必要のない情報を与えない
      • 照会を依頼してきた人の身元がはっきりとしない場合は、一度電話を切り、かけ直す
      • 返答は名前、ポジション、勤務期間などの客観的な内容に限る
      • 照会については人事部、もしくは人事担当者を通して行うことを従業員(特に照会を受けやすいマネージャー格)に知らせておく
      • 人事部もしくは人事担当者は照会に関するマニュアルを作成し、従業員に配布する
      • 従業員が退職する際、照会に関してどこまでの情報を与えていいかを、本人のサインと共に了解を得る

履歴書だけでは判断不可な事項については、応募者にジョブ・アプリケーション・フォームを記入していただきます。
このフォームの中にも、やはりアメリカでは日本の履歴書にあるような、仕事とは関係のない個人的な情報を聞いてはいけません。

7.採用内定(Offer)

複数の面接担当者による面接並びにテスト、更に応募者の照会がすべて終了した後、どの応募者に内定を出すか、最終的な決定をします。企業の規模や業績、ポジション、応募者の希望年収、能力、技能や経験などによってどういう人材を必要としているかを考慮し、選考します。ただし、企業側と応募者側の立場は同等であり、企業側が内定を出したとしても、応募者側が受諾するとは限りません。
アメリカでは、内定の詳細を内定通知(Offer Letter)として応募者に送り、本人より受諾のサインをもらう方法が一般的に行われています。

8.オリエンテーション

採用決定後、応募者(従業員)を有効に働かせるか(Swim)、駄目にしてしまう(Sink)かは、オリエンテーションにかかっている。1人を採用するまでにかかった労力とコストを考慮すると、オリエンテーションの重要性は高いと言えます。特に最初の一週間は仕事の満足度を含め、後々のパフォーマンスにも影響をあたえます。

1. 従業員がスタートする前に確認する事項
      • 初日の出社時刻
      • 車で通勤の場合の駐車場
      • 使用出入り口
      • 各リポートの提出部署
      • 服装
      • 特殊な道具や装備の必要有無
      • 必要書類(パスポートなど)
      • 昼食を取るための施設
2. 初日にするべきこと
    • 企業のポリシーを説明
    • 従業員就業規則(Employee Handbook)を渡し説明
    • ID を複写し、合法的に働けることを確認
    • W-4 Form とState Withholding Form に記入
    • 従業員が使用する机の上を整頓し、気持ちよくスタートできるような環境作り をする