「愛情やユーモアの表現が誤解された」
「自分自身の考えでは一線を越えたことはない。ただ、その線が引かれている場所がどれだけ変わっていたかということを認識していなかった。世代的、文化的な変化があり、私自身はそれを完全には理解していなかった」
この発言に聞き覚えはあるでしょうか?

これは、先日、辞意を表明したニューヨーク州のクオモ知事の発言です。クオモ知事は州政府の複数の職員にセクシャルハラスメント行為を行った疑いがあり、調査が進められていましたが、最終的にニューヨーク州の司法長官がセクシャルハラスメントを行っていたと結論づける報告書を発表しました。報告書の発表を受け、バイデン大統領もクオモ知事は辞職すべきだという考えを示し、セクシャルハラスメント行為を許容しないという断固とした姿勢が示されました。

クオモ知事と被害を訴える州政府職員の間に何が起きていたのでしょうか?報告書の内容はThe New York Timesのウェブサイトでも公開されています。

クオモ知事はセクシャルハラスメント行為を否定していますが、被害者が性的な発言を受けたり、不適切に触れられたという細かな状況の記述があり、既にご覧になった方もあるかと思います。また、各メディアの報道する一連の出来事に、今の時代にまだこのようなセクシャルハラスメントが起きるのかという印象を持った方もあったようです。

どの時代でもどんな形であれ、セクシャルハラスメントは断じて許されるものではありませんが、確かに、多くの方が認識するセクシャルハラスメントの代表例のような行為が目立つ為、このような意見が出てくるのも頷けますし、中には、自分はこんな過ちを絶対に犯さないと思った方も少なからずあると思います。
では、「自分は絶対にセクシャルハラスメント行為を行わない」という方が現実に加害者になることはないのか?と言われるとそうでもありません。

セクシャルハラスメント行為を絶対に行わないという意思は言うまでもなく大事なのですが、まずはその行為が日本の認識と大きく異なるという点を理解する必要があるからです。このブログをご覧頂いている方のほとんどが日本での勤務経験もお持ちだと思いますが、日本でのセクシャルハラスメント行為の認識をベースに行動しようとすると、ほぼ間違いなく、思わぬ落とし穴が待ち受けています。

私自身も日本での勤務経験もありましたが、アメリカで初めて研修を受けた時に、セクシャルハラスメント行為に該当する行為の広範さや認識の違いに驚いたことを思い出します。

実際に弊社のセクシャルハラスメント防止研修を受講頂いた方のご感想には、
「セクシャルハラスメント行為の認識が大きく変わった」
「普段の何気ないコミュニケーションを改めるきっかけになった」

など、セクシャルハラスメント行為自体への認識の変化があったり、

「在宅勤務なので、セクシャルハラスメントは起きにくいと思っていた」
というセクシャルハラスメントが起き得る状況や場所への認識の変化があったり、

「多様性が認められる時代だからこその注意点が勉強になった」
といったセクシャルハラスメント行為の被害者になり得る対象者についての感想をお寄せいただいた方もありました。

冒頭のクオモ知事のように「表現が誤解された」「世代的、文化的な変化があったことを完全に理解していなかった」という発言が事実であっても、被害者が存在する以上、「知らなかった」は通用しません

セクシャルハラスメント防止研修が既に義務化されている州では、法律の観点からも研修を行う必要があります。ですので、「罰金を払いたくないから」とか「従業員に訴えられたくないから」という目的で、研修を実施されている雇用主の方もあるかと思います。それはもちろん大事なことです。

ですが、本来の研修の目的は、従業員全員がセクシャルハラスメントに対しての共通認識を持ち、お互いが気持ちよく仕事に集中できる環境作りをするという点であるべきだと考えます。過去何年間も問題が起きなかったから、今後も大丈夫ということは絶対になく、もしかすると、今も被害が起きているのに、被害者が職場での雰囲気を悪くしない為に我慢しているといった状況があるかもしれません。ここ数年、特に2017年にアリッサ・ミラノさんのSNSの書き込みから始まったMeToo Movementにより、被害を受けている方が声を上げやすい環境が整ってきています。

企業が新陳代謝を繰り返しながら、変化していくさまを生物に例える方がありますが、ここアメリカでは特に転職者も多いので、1~2年前に勤務していた従業員と現在の従業員の顔ぶれが大幅に変わっているということは頻繁にあります。そんな事情からも定期的に研修を行う事で、セクシャルハラスメント全般に対しての認識や、会社の姿勢を常に最新の状態にしておくことが雇用主には求められます。

私の個人的な言葉の受け止め方の問題と言われればそうかもしれませんが、日本ではセクハラ・パワハラ・マタハラといった略語で深刻な事態が表現されることがあり、言葉の響きによって罪の深刻さが失われている気がします。セクシャルハラスメントは性をベースにした差別行為であり、加害者は厳しく処分されます。ニューヨーク州、カリフォルニア州、イリノイ州を中心とした州で研修の義務化や違反者への罰則の強化の流れが毎年加速しておりましたが、この流れにこれまでは縁のなかったテキサス州でも、セクシャルハラスメント関連の法律を厳格化するという動きが進んでおり、今後、全米に広がっていくことが想像できます。

適切な研修を定期的に行う事でセクシャルハラスメント行為が社内で起きないようにすることがまずは一番大事なことですが、万が一、発生してしまった場合に、その状況を即座に会社に報告するための通報制度の仕組みや、会社としての姿勢や違反者の処分を定めておくポリシー作成なども、雇用主として従業員を守るためにできる防衛手段の一部です。

「やらなければならないことはわかっているが、何から始めればいいのかわからない」
こんな方もいらっしゃるかと思います。そんな時には、各地域の営業担当がサポートさせて頂きますので、お気軽にご相談下さい。

ニューヨーク州担当:成瀬寛美
E-mail: hnaruse@actus-usa.com / Tel: 917-653-4427
ニュージャージー州・ミシガン州・カリフォルニア州担当:菱沼誉支
E-mail: thishinuma@actus-usa.com / Tel: 267-984-0642
イリノイ州・テキサス州担当:山田明宏
E-mail: ayamada@actus-usa.com / Tel: 214-930-1237