州内のほぼ全ての雇用主に対し、全従業員の1年間に40時間までの有給休暇の獲得・使用を承認することを義務付ける州法です。同法による有給休暇に関しては、その使用理由に制限はなく、全くの従業員の裁量によるものです。以下、同法による要件をまとめてお知らせいたします。

雇用主が既に従業員に提供している他の有給による休暇との区別をつけるために、便宜上、下記において同法による有給休暇をSB208休暇と表現します。

施行日:

2024年1月1日

対象雇用主: 

イリノイ州で就労する従業員を雇用する全雇用主。例外は設けられているが、一般の民間企業は同法でカバーされると考えて構わない。ただし団体交渉協定を結んでおり、この協定にて明確な文章にて同法も対象になるような法的要件適用の放棄が盛り込まれている場合のみ、同法の遵守が免除される。

対象従業員:

一部例外を除く、州内で就労する全ての従業員。一般の民間企業における従業員はカバーされると考えて構わない。インディペンデントコントラクターは対象外。

SB208休暇の獲得:

  • 従業員は40時間の実働に対して1時間のSB208休暇を獲得する(アクルーアル方法)。エグゼンプト従業員の場合は、1週間の就労を40時間とみなすか、雇用主による通常の1週間の就労時間規定が40時間未満の場合は、その時間を適用する。アクルーアル開始は2024年1月1日2024年1月1日以降の新入社員の場合は、勤務開始日。
  • 1年間に獲得できるSB208休暇は最高40時間。ただし、上限を40時間以上に設定するかどうかは雇用主の裁量。
  • 「1年間」(=リーブイヤー)の設定は連続12ヶ月である限り雇用主の裁量
  • リーブイヤーの設定条件を変更する場合は、従業員に事前に文書で通知すること。また、変更によって従業員に不利益が発生しないことが条件。
  • フロントローディング方法によるリーブイヤー初日、ないしは入社日に年間の想定獲得時間を一度に付与することも可能。この方法を導入する場合、パートタイム従業員やミッドイヤー入社の新入社員の場合、必ず、リーブイヤー内に就労が見込まれる時間に対して「40時間に1時間の獲得ルール」を適用して付与時間を計算すること。

SB208休暇の使用:

  • 使用は2024年1月1日から90日後(2024年3月31日)、または新入社員の場合は2024年1月1日以降の勤務開始日より90日後より可能となる。
  • 雇用主は使用単位を設定することができる。ただし、1日に付き2時間以内の単位でなければならない。もし、従業員の1日の就労シフトが2時間未満の場合は、そのシフト時間を適用する。

SB208休暇の使用通知:

雇用主は、従業員に対しSB208休暇の使用が予定できる場合は7日前までに、予定できない場合は、使用の必要性が明らかになり次第会社に通知しなければならない、とのルールを適用することができる。(従業員にSB208休暇の使用理由を質問したり、使用理由を証明するための書類を求めたりすることができないことから、事実上、事前申請ルールを徹底することは難しいと言えます。)従業員による通知は文書によるものはもちろんのこと、口頭の通知も受け付けなければならない。また、予定できない場合にも事前の通知をルールとする場合は、その通知方法の詳細を文書にて従業員に通知しなければならない。

翌年度への繰越:

  • アクルーアル方法によるSB208休暇ポリシーの導入の場合は、リーブイヤー末に未使用で残っているSB208休暇時間は翌年度に繰越させる必要がある。ただし、雇用主は従業員がリーブイヤー内で使用できるSB208休暇時間を最高40時間(雇用主の裁量で40時間以上の設定も可)と設定することも可能。
  • フロントローディング方法によるSB208休暇ポリシーの導入の場合は、リーブイヤー末に未使用で残っているSB208休暇を放棄させても構わない。

離職時のSB208休暇の買取:

  • 従業員の年度末、または離職時に未使用として残っているSB208休暇を買い取る必要はない。ただし、既にPTOポリシーやバケーションタイムポリシー、病欠ポリシーを自主的に雇用主が導入している場合で、SB208休暇の使用時間数が既存の有給休暇バンクから差し引いたり、またSB208休暇分を有給休暇バンクにクレジットしたりするなどして、同時運用をする場合は、同法ではなく、イリノイ州の最低賃金法等の要件が適用されることから、同時運用のSB208休暇分も含め、離職時の未使用の休暇の買取が必要になるので注意。
  • 離職済みの従業員が12ヶ月以内に復職した場合は、離職時に未使用として残っていたSB208休暇を復活させ、離職日より使用できるようにする必要がある。

シカゴ市、クックカウンティーによる病欠法対象の雇用主:

2024年1月1日時点で有効な “有給病気休暇や有給休暇を含むあらゆる形態の有給休暇を従業員に与えることを雇用主に要求する自治体または郡の条例 “の対象となる雇用主に同法は適用されないことから、別に40時間の有給休暇を従業員に提供する必要はない。

賃金:

SB208休暇使用に適用される賃金は従業員の通常の時給。チップ制度やインセンティブ制度が適用されている従業員の場合少なくとも適用される最低賃金法による最低賃金の適用が必要。

何らかの有給休暇制度を導入済みの雇用主:

既に同法が義務付けられている年間の休暇獲得時間数要件を満たすPTOポリシーやバケーションタイムポリシーなどの有給休暇制度を導入済みで、従業員がこれらの有給休暇を使用するための理由が制限されていない場合はポリシーを改定する必要はない。ただし、離職時の買取が必要になる可能性があることに注意(上述参照のこと。)

同法に関する通知義務:

  • Illinois Department of Labor(IDOL)が、施行日までに同法の要件や従業員の権利を要約した通知書を作成しIDOLのウェブサイトで公表する予定。雇用主は、この通知書が公表された後に、この通知書をダウンロードしイリノイ州の全ての職場で掲示しなければならない(ポスティング義務)。もし、大多数の従業員が英語を理解できない場合は、その旨をIDOLに通知する義務がある。IDOLは通知を受けた場合、必要な言語にて通知書を作成する。
  • ハンドブックや休暇ルールブックなどを導入済みの雇用主は、この通知書をこれらの資料の中に含める義務があるので作業を忘れないように注意。

レコードキーピング義務:

  • 雇用主には、各従業員について、(1)労働時間、(2)SB208休暇の発生と使用時間数、(3) SB208休暇の残日数を示す記録を作成し、これら記録は少なくとも3年間保管する義務がある。
  • IDOLよりこれらの資料閲覧要請があった場合はもちろんのこと、アクルーアル方法を導入の場合で従業員本人からの閲覧要請があった場合にも迅速に対応できなければならない。

同法執行:

  • 労働者からの苦情に関する調査実施も含め、同法の執行機関はIDOL。
  • 従業員は同法違反疑惑行為の発生から3年の間であればIDOLに苦情を届け出ることが可能。
  • ポスティング義務違反は初回が500ドル、以降は都度1000ドルの罰金
  • ポスティング義務以外の同法要件違反で訴訟に至った場合、被害を受けた従業員に対する、未払い賃金、補償的損害賠償、および500ドルから1,000ドルの損害賠償金、弁護士費用や専門家証人召喚費用の負担の可能性。また、2500ドルの民事罰金が課せられる可能性もある。この罰金は州政府が立ち上げる特別基金Paid Leave for All Workers Fundにデポジットされる。

同法遵守準備のために必要なアクション

  • 現行の有給休暇ポリシーを見直し、同法による要件が満たされているかどうか、満たされていない場合、ポリシーの要件を改定し、2024年1月1日以降は
  • SB208休暇ポリシーに改定して導入する
  • SB208休暇と現行の有給休暇制度を同時運用するようにポリシーを改定する
  • SB208休暇を別途従業員に提供する

といった決定を行い、従業員に通知する。決定に沿って、ハンドブックポリシーのアップデートまたは新ポリシーの導入。

  • レコードキーピング義務遵守の準備。管理業務担当者や従業員の休暇申請に携わる現場の管理職者の教育。
  • IDOLが作成予定の通知書の公表に注意を払い、公表され次第、通知書をダウンロードし、職場での掲示及びハンドブックへの挿入。
  • 今後IDOLによって同法遵守のためのガイドラインが発表されると思われるので、IDOLのアクションに注目する。

 

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